気分転換の手段にも色々ありますが、食べ歩きはその代表格でしょう。旅行などと違ってさっと行けてさっと帰ってこれるから時間も要らないし、その割には気分がアガる効果も大きい。
もちろん飲食店と言っても様々で、食べるという本来の「食べ物屋」としての役割だけを愚直に果たす店からえらく雰囲気の凝った店まで様々ですが、多かれ少なかれ、「店」という空間が気分を強引に変えてくれる面はあります。
ただ、そうはいっても自分の日常からかけ離れた雰囲気の店であればあるほど、この効果は大きいのは事実です。だからこそ、雰囲気に拘るというやり方が飲食店を経営するうえでの一つの戦略になりえるわけですし、お客サイドからいってもこの手の店が「特別な店」になりえるのです。
実際、飲み屋街などに行くと、目を疑うほどお洒落なバーなんてのもちょくちょくみかけますが、この手の店などは徹頭徹尾贅沢感一本やり。日常感の薄さは半端ではなく、ものの30分もいれば酒そのものの味などとは別に「なんかすごい空間だったなあ」と圧倒されてしまいます。こうなると、日頃のストレスが飛ぶ…というよりも、忘れてしまう。その効果は絶大です。
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明後日の方向にぶっとんだマジックスパイスの世界
さて、こうしたある意味で特殊な雰囲気を作り出すのは、何も高級路線だけではありません。どういう店の空気が好きかは千差万別ですし、様々な方向に尖った店というのは存在するものです。
そんな中でも、比較的訪問しやすい価格帯、かつ、かなりあさっての方向に突き抜けた店の代表格が、「マジックスパイス」です。有名店なので名前くらいはご存知の方も多いと思いますが、元は札幌発祥のスープカレー店の草分け。都内だと下北沢、他にも大阪・名古屋にも店を持ちます。
このお店、味の方は後述しますが、それ以上に店全体のぶっとび具合がすさまじい。目がちかちかするような原色をちりばめた店内はここが日本国内であることを忘れそうになるほどですし、メニューもネーミングからして強烈です。
独自システム?妖しすぎるメニュー名が心を揺さぶる
カレーは辛さが基本7段階なんですが、それぞれ「覚醒」だの「涅槃」だのと、非常に怪しげな名前が付けられており、注文の段階で食べたら何かが起こりそうな、そんな感じがプンプン漂ってきます。サイドメニューに至っては下手にここで書くと検索から外されてしまいそうな妖しさで、もはや名前だけでは何が出てくるのか想像もできないものが相当数を占めています(添えられた説明文まで読めばさすがにわかりますが、その説明文も相当飛ばしてます)。
何より、メニュー表では辛味の宇宙に旅立ちましょうみたいなことが滔々と述べられており、完全に確信犯。初見だと食べる前の段階であっけにとられること必至です。
マジックスパイスならでは?突飛さと親しみやすさの絶妙なバランス
とはいえ、ここまでやってあまりあざとさが鼻につかないのはさすが。というよりも、ここまで行くところまで行ってしまうと、鼻につく前に空気に圧倒されてしまうというのが実際のところでしょうか。そもそも店自体が食を中心にしたエンターテインメントを標ぼうしているだけあり、その辺の空気づくりは徹底しています。徹底しすぎて、店自体が異世界に行ってしまってる気もしますが、この店はそのぶっとび具合こそが絶対的な存在感を生み出しています。
ちなみに、こうした店の割には店員さんはかなりフレンドリーな方が多い印象があり、慣れてくると話しかけてきてくれたりもするので、不思議な親しみやすさもあります。もちろん軽く言葉を交わす程度ですが、常連さんの中にはこうした絶妙な雰囲気が好きで通っている人もいるんじゃないでしょうか。
肝心のスープカレーの味は?体験者が語ります
主役であるスープカレーが後回しになってしまいましたが、カレーというイメージで行くと意外な印象を持つでしょう。
というのは、スープカレーという前提で見ても相当にさらさらしているためです。味もカレーの濃厚なイメージとは違い、まさにスープ。後味含め、いい意味で非常にあっさりした味わいです。スープカレーとは言っても単に汁気が多いという意味で使っている店が多いだけに、そうした味をイメージしていくと、かなり意外に思うかもしれません。
実際、筆者自身、はじめて訪れたときにはかなり虚を突かれた気分になりました。いわゆる「カレーの味」を期待していただけに、正直に言うと少しがっかりさえした覚えがあります。
これはマジックスパイスという食べ物だ
ただ、それでもせっかくだからと食べていると、これがだんだんハマる。あくまで「普通の、日本的なカレー」のイメージがあるから意外に思うだけで、その思い込みさえ外してしまえば、味は非常に質が高いです。おそらく相当に手を凝らしてあるだろう香辛料の複雑な味わいも、慣れてくると癖になりますし、味付けはしっかりしています。
特に、辛さの段階を上げていってもしっかり味が感じられるのが凄い。普通、激辛レベルの食べ物は味がしないというのが珍しくありませんが、マジックスパイスの場合、辛くて辛くて汗が噴き出てくるほどなのに、口の中いっぱいにうま味がしっかり感じられます。おそらく激辛に慣れた人ほど驚くでしょう。これはもう「マジックスパイス」という、個別のカテゴリーの料理と思った方がしっくりきます。
ただ、最初はやはり素のままで、普通のカレー屋に行く気分でいって、雰囲気の演出込みでこの店特有の普通のカレーとのギャップ感に呑まれていただきたいというのも本音です。正直紹介に困るんですよね。割り切っていくといいよ、みたいなアドバイスがあまり適切とは言えないんですから。
下北沢の雰囲気と併せて楽しんで!
ちなみに、辛さを売りにしたスープカレー屋と思われがちな同店ですが、何気に辛さの段階さえ落とせば辛さがかなり苦手な人でも楽しめるレベルです。さすがに、「辛いの自体全くダメ!」という方(友人に一人だけいます)はやめておいた方がいいでしょうが、そこまででなければ、一度チャレンジしてみる価値のある名店です。
都内にお住まいであれば、休日1日使って下北沢界隈のサブカルな雰囲気とあわせて楽しんでみるのもオツですよ。
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