ビッグコミックスピリッツで連載中の『土竜の唄』。
生田斗真さん主演、三池祟史さんが監督で2014年には映画化もされました。
三池祟史さんは国内アクションでは重鎮です。
とはいえ割と怪作も多く、ときどき明後日の方向に全力疾走したものもあります。
ただ、『土竜の唄』という原作を考えると、三池さんは適役だったのではないでしょうか。
マンガ原作の実写作品は、ただでさえイメージが原作とずれることが多いです。
ですが、『土竜の唄』の場合、原作がそもそもぶっ飛んでいますから、
イメージを気にしすぎても逆にツラい作品になってしまう気がするのです。
それだけに、三池監督のブチ切れたノリが活かせたのではないかと思います。
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潜入捜査官というシリアスな題材とバカノリの混在『土竜の唄』
さて、映画化で話題を集めた『土竜の唄』ですが、その原作はというと、エンタメに徹しながらも、前述したように、かなりぶっ飛んだノリが特徴的な作品です。
簡単に言うと、覆面捜査官がやくざに潜入捜査を決行してトップの逮捕を目指す、
という潜入ものの王道を、かなりアクション方面に偏った形で描いたものです。
が、この作品の個性を決定的に特徴づけているのは、ひたすらにおバカなノリです。
露骨に言ってしまうとむしろ下品と言ってしまっていいレベル。
細かく説明すると、このノリが合わない方には引かれる恐れがあるため、これで何とか察してください。敢えて言えば、お色気ではなく、どっちかというと小学生ノリの下品さです。
ただ、そのテンションを維持したまま、シリアスなアクションや人間模様が展開される、
絶妙なバランス感覚が原作の醍醐味です。
潜入もので類をみない、突き抜けたキャラ設定
あと、これは筋だけ聞いた人には意外かもしれませんが、アクションものにありがちな殺伐さが薄いのもポイント。描写そのものは過激なのですが、雰囲気はむしろ緩いです。
これは、主人公の玲二のキャラクターによるところが大きいのですが、一貫して人情家なんですね。
そんな主人公が、潜入捜査官として素性をバレないよう、でも事件の悪化は防がないといけないという紙一重の駆け引きをしていくのですが、その過程でむしろ相手にほれ込まれて信頼を得てしまうという感じです。
また、潜入先で出会う連中(つまり相手組織のメンバー。当然バレたら終わり)にしても、ラスボス周りは別として、これでもかという具合に個性が強く、それでいて一定のラインで矜持を持っているのもポイント。のちに相棒的なポジションになる「クレイジーパピヨン」をはじめ、毒々しさに満ち溢れながらも華やかさを感じさせるメンツ。アンダーグラウンドといえばこれ以上ないくらいアンダーグラウンドな題材にも関わらず、不思議と陰にこもったダークさがなく、どちらかというと明るい魅力にあふれています。
コミカルな絵柄も含め、潜入アクションというジャンルでこうした緩さというのもなかなか珍しいのではないでしょうか。
下品さに耐えられるならむしろ万人向けの王道作品
なので、たとえば展開されている事態はすさまじいことになっていても、
前述のおバカノリとの複合効果でむしろほっこりしてしまうという(笑)。
私自身は、むしろ読んで癒されています。
作品イメージと違って、下品さにさえ堪え切れるなら、普通のアクション系が苦手な方にも薦められる、むしろ万人向けとも言っていい作品になっています。
エンターテインメントの王道を味わえると思いますよ。
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