最北の廃線・天北線。ここを路線バスで廻ろうとした場合、廃線とは関係ないエリアにも関わらずほぼ間違いなく通り抜けることになる観光地がある。宗谷岬だ。

これは、バスが1路線しかなく、かつ途中から廃線ルートを逸れて宗谷岬経由で稚内市街に向かうため。そのため、鬼志別からとんぼ返りでもしない限りは、最低でも通過はすることになるはずだ。

よく言われるように、宗谷岬は観光地としての見どころには事欠かないので、どうせ通る以上は立ち寄ってみたいと思うのが人情。とはいえ、天北線自体が訪れるのがかなり手間を食うため、日程に余裕がない限りは時間の問題でかなりの制約が出てくる。

そこで、ここでは天北線巡りのついでに寄るという前提で、筆者が宗谷岬を回ったときの記録と執筆時点での状況をまとめてお話しする。立ち寄ることを検討しているなら参考にしてほしい。

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天北線代替バスでの宗谷岬観光の問題点は便数の少なさ

まず、2020年現在の大前提を先に書いておくと、「天北線巡りのついでに」宗谷岬で途中下車するのであれば、鬼志別~中頓別間のどこかで一泊する必要がある。

これはルートを南下する場合でも北上する場合でも同じ。バスの本数が削減を重ねた結果、一日で稚内~音威子府間を直通できる便は上下各1本だけになってしまっているため、途中下車した場合どうやってもルート途中で足止めを食ってしまうためだ。

可能なら宗谷岬宿泊や稚内市街からの往復も検討する

特に北上する場合、宗谷岬に到着するのが最終便。つまり、タクシーでも呼ばない限りは「宗谷岬で夜を明かす」ということになってしまう。

一応、宗谷岬には「民宿 宗谷岬」というそのものズバリなネーミングの宿があるが、なにせ宗谷岬ではほぼここしか選択肢がない分、人気も高い。ここの予約が取れていない限りは別の方法を考えるか、諦めて途中下車はしないこと。

なお、記事の主旨とはズレるが、宗谷岬にバスで行く場合に一番やりやすいのは、稚内市内を拠点にして往復する方法。最初の便か次の便なら、宗谷岬到着時点で店の営業時間内だし、万が一休業だったとしても40分強の待ち時間で稚内へのとんぼ返りが可能だからだ。手間とお金はかかってしまうが、どうしても宗谷岬に寄りたいなら検討の余地はある。

冬場の宗谷岬の絶景と重大な注意点

その上で書いていくと、私が訪れたのはまだ本数がそこそこあった2012年。季節は3月の朝だった。宗谷岬バス停は、その名の通りまさに岬の突端の側にあり、下車するとすぐに、猛烈な寒さが襲ってきた。

強烈な寒さと、現実離れした絶景

宗谷岬・日本最北端の碑
宗谷岬・日本最北端の碑

北海道についてからずっと「さすが北海道、寒いなあ」とは思っていたものの、そんなのが序の口と言わんばかりの、文字通り刺すような寒さ。かなり防寒には気を使っていたものの、これではまるで意味がない。なにしろ、写真でも撮るかと手袋を外した途端に、みるみる手の指の感覚がなくなっていくのだから。

ただ、その寒さを差っ引いても、冬の宗谷岬の風景は絶品だった。写真の腕が悪いので申し訳ないけれど、見渡す限りの流氷…というか、海が凍結しているんじゃないかというレベルで、表面には氷しか見えない。まさに別世界だ。もちろん、周囲も見渡す限りの銀世界で、雪ばかりである。

高台から見下ろす宗谷岬
高台から見下ろす宗谷岬

岬自体も割と広めだが、道路を挟んで反対側はすぐに高台になっており、そちらには展望台などがある。足元に気を付けて上ると、先ほど間近で見た氷の海が、視界一杯に広がる。よくよく見れば、野生のキツネがウロウロしていたりして(すぐ逃げたけれど)、そういう意味でも本州暮らしの人間としてはなんだか現実離れした体験だった。

バスで訪問する冬の宗谷岬の度をこした過酷さ

ただ、確かに絶景ではあったのだけれど、それを差っ引いても、冬場の宗谷岬はあまり他人にはお勧めはできない。やはり、日本とは思えないほどの寒さはあまりにも過酷すぎるからだ。

それでいて、ほとんどの便で待ち時間は数時間。しかも、冬場は多くの店は休業しているため暖をとるため避難するということも難しい。一部開いている店もあるが、不定休なので、万が一店休日に当たってしまった場合悲惨なことになる。

宗谷岬に並ぶ店たち
宗谷岬バス停そばの風景。店が並んでいるが、この日は軒並み閉まっていた。

待ち時間を短くするのであれば鬼志別側からの始発便なら1時間ほどで次の便がやってくるが、かわりにまず店は開いていない。けれど、敢えて冬場にバスで行き、しかも店に入らないという前提で臨むのなら、この組み合わせの待ち時間が、寒さに耐えるうえで限界だろう。もちろん、寒さへの耐性に自信があり、かつ万全の防寒をしている前提で。

耐える自信がないなら、バス車内から風景を眺めるにとどめた方が無難だ。さすがに下車して間近にみるのとは印象が違うけれど、海沿いを進んでいくルートがずっと続くので、独特な海の雰囲気を感じることはできるだろう。

夏場の宗谷岬は絶景の避暑地

では夏場はどうかというと、正直宗谷岬は夏でも涼しい。一番暑くなる8月でも、平均気温は18.6℃。前後する7月、9月だと、15℃前後で、最低気温だと13℃台まで下がる。上着は必須と言っていいだろう。

ただ、避暑地としては最高だし、雪がない代わりに周辺の宗谷丘陵の雄大な絶景が味わえる。北海道遺産にも指定されており、見渡す限り草原が広がる絶景ぶりは折り紙付きだ。牛が放牧され、風車が回る風景は、冬場とは一変したインパクトを与えてくれる。

また、冬場には休業していた店も、この時期には開いている。有名な「食堂 最北端」などは、記念も兼ねて立ち寄っておくと思い出になるだろう。

この時期に行くのであれば、多少バスの間隔が空いても問題ないだろう。むしろ、時間を取って宗谷岬をじっくり堪能できるはずだ。体調的な安全を考えても、個人的にはこちらを推しておきたい。

途中下車できなかった時に?お手軽さが魅力のノシャップ岬

ここまで述べたように、宗谷岬という観光地は、魅力と引き換えにアクセス的には非常に難がある。

では、他にめぼしい岬はないのかというと、これがある。稚内市内からほど近い、ノシャップ岬だ。

ノシャップ岬に鎮座するイルカ像
ノシャップ岬に鎮座するイルカ像

こちらは宗谷岬と違ってバスも頻繁に出ているため、代替バスを乗りとおした後でも訪れるのは容易。冬季休業の店がほとんどなのは同じだが、市場などは空いていたし、何よりバスの本数が多いので冬場でもそこまで気にはならないだろう。

もちろん、宗谷岬と違って、市街からほど近い分秘境感はないし、何より「最北の地」というプレミアム感もない。そこは立地上、仕方がないだろう。

ノシャップ岬に向かう道路
バス停からノシャップ岬へ向かう途中の通り。水族館が右手に見える。

ただ、海景色に関して言えばこちらもなかなか。宗谷岬の荒涼とした絶景とはまた違う、広々した北の海を楽しめるはず。また、夏季に関して言えば水族館なども開くので、エンタメ的な意味でも宗谷岬とは違った魅力がある。

宗谷岬でどうしても下車できないようであれば、最初から割り切ってこちらを楽しむのも一興だ。

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