かつてはヤンキー漫画中心の青年コミック誌として有名だった『ヤングキング』(少年画報社)ですが、しばらく読んでないうちにどちらかというとアンダーグラウンド全般を扱うようになっていたようで、かなり強烈なコミックが軒を連ねるようになっていました。
最近では『善悪の屑』とかが有名ですよね。一応萌え系に属しそうな作品もいくつかあるものの、全体としてはかなりダークな色合いのラインアップで、雑誌としての読み手の絞り込み方はいっそすがすがしいほどです。
今回はそんな素敵ラインアップ中でも、特に好き嫌いが分かれそうな一品を取り上げます。
小幡文生氏の『シマウマ』です。
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吐き気さえ催す容赦なさ 小幡文生『シマウマ』
本作はネタだけを見ればいわゆる復讐屋もの。半グレ一歩手前の悪行三昧の生活を送っていた主人公「ドラ」が、ある日トラブルから復讐屋にスカウトされるというのを発端に、彼ら復讐屋の酸鼻極まりない「仕事」が描かれて行きます。
初期の大筋は、依頼を受けて加害者に恨みを晴らすという、往年のドラマ『必殺仕事人』の系譜に属する筋書です。
似たテーマのコミックとしては、『恨み屋本舗』などを筆頭に枚挙にいとまがなく、ダークながら青年誌においては定番のジャンルと言えるでしょう。
が、『シマウマ』が特異なのは、そのバイオレンス描写。
はっきり言ってやりすぎもいいところで、免疫のない人なら吐き気を催すレベルです。
同ジャンルの他の作品と違ってターゲットを殺害することこそあまりないものの、その分相手の一生を破壊するレベルの拷問が主となっているため、絵面としてはむしろ他作品をはるかに超えるレベルでエグくなっています。
また、特筆すべきは、作品全体を通して流れる救いようのないアングラ感とアブノーマルな雰囲気。
登場人物も、復讐屋側も含めてほぼ全員が何かしらの形で異常な連中ばかりです。むしろ、復讐される側の方がマトモに思えるくらいに。
復讐物は、性質上どうやったってピカレスクものにはなるわけですが、それにしてもここまで陰鬱かつ異常な雰囲気はめったに見られません。
ストーリーの完成度は疑問だが、インパクトは隋一
率直に言って、作品全体のストーリーとしての完成度は正直疑問符が付きます。バイオレンス描写ありき…というよりも、むしろバイオレンスを描くための器として舞台や設定を用意したような不自然さがどうしても付きまといますし、話の構成としても間延びしている感触は否めません。
特に、本作は後半になるにつれて徐々に復讐屋内部での抗争や、そもそも復讐屋とは何だったのかという謎の方に重点が置かれるようになっていくのですが、正直、核心に至るまでの展開がかなりダラダラしています。
ただ、本作に限って言えば、そうした欠点は、おそらく作者も、編集部側も承知の上なのではないかと。その上での確信犯なのではないかと思います。
なにしろ、それだけ間延びしているにもかかわらず、漫画としてのインパクトが落ちていない。シナリオとしての構成の完成度が低いのがわかっていながら、それでもすさまじい引きがあるのです。復讐系の作品はその特性上、ストーリーの謎的な要素は薄い作品が多くなりがちですが、本作に関してはどういう形で決着させるのかがただただ気になる、稀な作品となっています。
一つだけ書いておくと、本作は初期とは形を変えたものの、一貫して「復讐」ものだということ。
連載は現在クライマックスですが、以前とは違った意味でえげつなさを極めたこの作品がどう完結を迎えるのか、楽しみに待ちたいと思います。
胸糞悪さ主体 復讐物としてはかなりの異端作
以上でもわかるように、本作は復讐ものの作品とは言っても、かなり系統が異なります。
特にクールな雰囲気が主体の『恨み屋本舗』とは、事実上別ジャンルといっていいくらいですので、同じ系統だからと思って読むとやけどすること必至です。
特に、初期の真っ黒さ加減はすさまじい。バイオレンスものが好きなら、度胸試しにどうぞ。極上の胸糞悪さを楽しめることと思います。
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