このブログで扱った作品には本来お色気作品ではないのになぜか色気を感じるという類のものが結構ありますが、その逆の作品というのももちろんあります。
つまり、明らかにお色気を意識しているのに、なぜかそっち方面では食指がうごかないというもの。
この辺は個人の趣味レベルなので一概には言えませんが、現在連載中の作品の中でわたしにとってのそういう一本を選ぶなら『サタノファニ』(山田恵庸/講談社ヤングマガジン)です。
といっても、作品全体としては気に入ってるので、一応念のため。

殺人鬼の疑似人格をニューロンとして埋め込まれた少女たちが、殺人を犯して収監される…という内容だけに、本筋のストーリーそのものはほぼバイオレンスアクション。
それにエログロシーンや、女性刑務所ならではの百合テイストといったいかにもな要素を大量にぶち込んだといった趣の本作は、いってみれば昔のミッドナイト上映のような怪しい雰囲気です。
個々のキャラ設定にこそ萌え系直結の要素が盛り込まれているものの(主人公である千歌の大食い属性など)、作者や編集サイドがそうしたごった煮娯楽作品としてのテイストを狙ったのはおそらく間違いないでしょう。
実際、バイオレンスや悪趣味描写に関しては行き過ぎてなかばあっけにとられるようなレベルになっており、明らかにインパクト重視の作り方をしています。

そんな本作ですから、当然お色気の方も、下着シーンはもとよりヌードも乱れ飛ぶてんこ盛り状態です。
ですから、そっち系としても実用度は高い、はずなんですが…
あくまで私の場合ですが、そっちの面ではまったくクるものがないんですよ、これが。

一応フォローしておくと、本作のお色気は、客観的に見て、決してレベルの低い物ではありません。絵は好みの差こそあれ綺麗ですし、描写そのものも一般紙としては相当えげつないレベルのシーンも多い。
ただ、本作の場合、本筋であるバイオレンスアクションとしての色が良くも悪くも強すぎるんです。
言ってみれば、ストーリーの面白さはかなりの水準だという事。
ハッキリ言って悪趣味な内容ではありますが、それだけに展開は徹底して早いですし、盛り上げ方もうまい。
この手のジャンルそのものが嫌いでなければ、かなりのめり込めるだけのクオリティは十分にあります。

ただ、それだけに、逆に萌えっぽい設定やお色気が、完全に埋没してるんですよね。
絵的なインパクトはあるけど、ただそれだけで、むしろストーリーはよ進めてくれって気分になるんです。
わたしはこの手の作品がかなり好きなので、なおさらそう感じるんだと思います。
逆に言えば、本作のお色気部分を楽しむのなら、むしろバイオレンス系に思い入れがない方の方が相性がいいかもしれません。
…もっとも、バイオレンスが苦手だと、逆にお色気以外の部分がツラ過ぎるでしょうが。

善悪の超越っぷりが面白いだけに、もしできれば、もう少し映える色っぽさを出してくれたら、すごいヤバいことになりそうなのにな、とは思います。
ただ、本作のテイストから言って、むしろそんなことは考えずに突っ走ってもらった方が、作品自体には多分いいでしょう。
ミッドナイト系には特に顕著ですが、いろんなニーズを満たそうとして、結果全体が丸くなってしまい全部台無しっていうのはよくあるパターンですから。
最後まで尖ったまま、ハダカもバイオレンスもバラまきながら突っ走っていただきたいと思います。

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